きちんとやっているつもりなのに、思い通りにならない。
その原因のほとんどは「悪意」ではなく、「誤解」に根ざしています。
社長に解いてほしい3つの誤解を、ここで丁寧にお話しします。
「経理(=お金の動きを記録する)」と「財務(=お金を先読みして動かす)」は、本来は別の仕事です。簿記の資格も、税理士・会計士の試験も、資金繰り管理の勉強項目はどこにもありません。
中小企業では経理との兼任が圧倒的に多いですが、それは「できる人がいる」ということではなく「専任を置く余裕がない」ということです。スキルのない担当者に、スキルがないとも知らずに任せている——これが資金繰り混乱の最も多い原因です。
社長が「助かる!」と思える資金繰りスキルを、経理担当者がもともと持っている——それは、はっきり言ってとても稀なことです。
資金繰り管理は、会社が意識して育てるか、外部のプロに任せるしかない。それが実情です。「なんとかなっているはず」と思い続けることが、一番のリスクです。
日本政策金融公庫や多くの会計事務所が提供しているフォーマット。あれは「金融機関が融資審査で使いやすい表」であって、御社の実務のために作られたものではありません。
どの現場がどれくらいの粗利で動いているか。どの案件がいつ入金になるか。御社固有の事情は、「標準品」には一切反映されていません。どの業種どの会社にも当てはまる資金繰り表のフォームなど、あるわけがないのです。
── 余談:「AIが資金繰りを予測」という広告について
最近、「AIが資金繰り予測」をうたうWeb広告を見かけるようになりました。おそらく、機能しないでしょう。
得意先の動向、現場ごとの利益、新規契約の見込み、失注——御社の資金繰りを左右するこれらの情報は、日々動き、数字になる前の「人の判断」の中にあります。それをAIが学習して予測できる、というのは少し考えれば無理があります。
資金繰り管理は、御社の事情を理解した人間が、社長と対話しながら動かすものです。
「前回の予測と今回はどう違うか。
それはなぜか。
では今後どうなるのか」
——これを担当者に問い続けることが、社長にしかできない、資金繰り管理の核心です。
私が実際に見てきた経験から言えば、破綻した会社の9割以上で、この分析のルーチンがありませんでした。担当者のミスは表に出ず、問題は積み上がり、緊迫したときに初めて大混乱が起きる。
担当者として働いていた頃の私自身の正直な懺悔でもあります——「分析を聞かれないと、楽でした。」予測の間違いがうやむやにできるからです。でも、その楽さがいつか大事故につながります。
3つの誤解に気づいたとき、選択肢は大きく2つです。数字を全部プロに引き取ってもらうか、担当者を育てる伴走を頼むか。
数字が見えると、人は動けます。話せます。一人じゃなくなります。
資金繰りの悩みで、社長を一人にしません。
合同会社Properly
代表社員:佐藤 崇
本社所在地:東京都練馬区下石神井四丁目
前職の後半は、本社で事業再生を担当していました。資金繰りが行き詰まった中小企業の現場に入り、立て直しを支援する仕事です。
そこで繰り返し見てきたのは——「もっと早く動いていたら、救えた」という場面でした。
その経験が、今の仕事の原点です。